作中で鹿目まどかたちが暮らす「見滝原市」は、結論から言えば実在する単一の自治体ではありません。しかし、完全にゼロから描かれたファンタジーの街でもない点が、本作の美術設定における極めて興味深い部分です。
総監督の新房昭之氏やアニメーション制作のシャフト、そして異空間設計を手掛けた劇団イヌカレーによって創り出された見滝原市は、世界各国の実在する先鋭的な建築モデルをパッチワークのように融合させたハイブリッド都市です。整然と立ち並ぶ巨大な風力発電用の風車、幾何学模様を描くガラス張りのビル、無機質でありながら洗練された立体歩道橋など、国内外のあらゆるロケーションが見滝原市のパーツとして息づいています。
この「どこかにありそうで、どこにもない」絶妙なリアリティこそが、視聴者を作品のダークで美しい世界観へと引きずり込む最大の仕掛けとなっています。