吉野といえば、満開の桜や幾重にも重なる吉野杉、そして万葉の歌人たちが愛した静謐な風土が真っ先に思い浮かぶ。しかし、その奥深くで滔々と湧き出る温泉の歴史を知る者は、これまで決して多くはなかった。古くは修験者や地元の木こりたちが山仕事の汗を流し、身体の傷を癒やしたとされる自噴泉。それがこの地の原点である。
時代の波に飲まれ、一時期は静まり返っていた時期もあった。だが、地元の有志と新進気鋭の空間デザイナーが手を組んだことで事態は一変する。歴史ある湯治文化の文脈を丁寧に守りながらも、無駄を削ぎ落としたモダンな木造建築様式を融合。歴史の重みと現代的な快適性が共存する奇跡的な空間へと生まれ変わった。