この特異な空間を生み出したのは、株式会社FERMENTを率いる白澤剛氏だ。彼が仕掛けたアプローチは、旧来の酒場カルチャーを単にトレースすることではなかった。大衆酒場の持つ「敷居の低さ」「猥雑なエネルギー」「飾らない旨さ」を骨格に据えつつ、グラフィックデザインや内装の抜け感、現代の若者が直感的に心地よいと感じるサイズ感へと再構築したのである。
巷で「ネオ大衆酒場」という言葉が定着する遥か前から、白澤氏の視線は常に客の日常そのものに向けられていた。外食産業が効率化や高級化の二極化へ進むなかで、氏が選んだのは「誰もが日常的に通える、最高にいなたい場所」のアップデートだった。その企みは見事に的中し、カルチャーに敏感なクリエイターから仕事帰りの会社員、近所の年配客までを同じカウンターに同居させる奇跡的な調和を生み出した。