映像コンテンツのローカライズにおいても、「シュガー」というカタカナ表記は作品のトーンを決定づける強力なスパイスとして機能している。
例えば、世界的な大ヒットを記録したディズニーのアニメーション映画『シュガー・ラッシュ』(原題:Wreck-It Ralph)では、レースゲームのお菓子世界を象徴するポップでカラフルなアイコンとして「シュガー」が採用された。原題の主人公名ではなく、甘く危険な世界観を前面に押し出した邦題の勝利と言える。
一方で、近年のドラマシーンではまったく異なる文脈でこの言葉が牙を剥く。Apple TV+が放映したドラマ『シュガー』(Sugar / Apple TV+)では、主演のコリン・ファレル(Colin Farrell)演じる私立探偵ジョン・シュガーの名がタイトルに冠されている。ロサンゼルスの暗部を舞台にした硬派なネオ・ノワール作品でありながら、どこか哀愁と優しさを漂わせる主人公のパーソナリティが「シュガー」という名に凝縮され、甘さと苦さの強烈なコントラストを観客に提示した。
Netflixをはじめとするグローバル配信サービスが日常に浸透した現在、作品のタイトルや台詞に散りばめられた「Sugar」をどう観客の感情に響かせるか、字幕・吹替の演出現場では常に高度な言葉の選別が行われている。