物語の舞台である「いずみがもり」は、まさに理想的でありながら極めて現実的な共同体の縮図だ。ここで暮らすからすたちの社会構造や、近所同士で助け合う姿は、日本の児童文学史において際立った存在感を放っている。出版元の偕成社から刊行された本作は、瞬く間にミリオンセラーとなり、絵本の可能性を劇的に広げた。
かつて日本児童文学者協会などでも活発に議論されたように、子供に向けた文化芸術が単なる道徳教育の道具ではないことを、本作は見事に証明してみせた。子ども自身が主人公となり、知恵を出し合って困難を克服していくダイナミズム。それは現代の出版業界においても、ヒット作を生み出す企画づくりの原点として今なお語り継がれている。