福田和子を題材にした映像化作品として、寺島しのぶ版と並び語り継がれているのが、2002年にフジテレビ系列『ゴールデンシアター特別企画』で放送された大竹しのぶ氏主演の『実録 福田和子』です。どちらも日本を代表する演技派女優が主演を務めていますが、そのアプローチと作品のトーンには明確な違いが存在します。
大竹しのぶ版は、逮捕からわずか数年後の制作ということもあり、世間を震撼させた凶悪事件の生々しい実録サスペンスとしての色合いが強く押し出されていました。大竹氏が見せた「常軌を逸した明るさと突然牙を剥く狂気」は、犯罪実録ドラマの金字塔として今なお語り草です。
一方、事件発生から30年以上を経て制作された寺島しのぶ版は、手記や裁判資料などの多角的な記録を再構成し、犯罪者の内面に潜む弱さ、孤独、そして逃れられない母子の共依存関係に深くメスを入れました。両作を見比べることで、同一の事件でありながら演出意図と女優の個性によって全く異なる人間像が立ち現れる面白さを味わえます。