インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「メッシは守備をしない」「試合中に歩いてばかりいる」といった批判的な書き込みが見られます。しかし、この「歩行」こそが、メッシの卓越した戦術眼と省エネ戦略の核心です。
欧州のスポーツアナリティクス機関の走行データによると、メッシは試合中の全移動距離のうち、およそ60〜70%を「時速7km未満の歩行」で過ごしています。他のフィールドプレイヤーと比較して総走行距離は確かに少ないものの、この時間を使って以下の2つの高度なタスクを実行しています。
1つ目は、「相手守備ブロックの死角への潜航」です。全力で走り回る選手はディフェンダーの視界に入りやすくマークされやすいですが、歩いている選手は人間の認知の隙間(盲点)に入り込みやすく、警戒が薄れた瞬間に爆発的なダッシュで裏を取ることができます。
2つ目は、「体力の極限的温存」です。90分間のうち、決定的なチャンスとなる「ここぞという5〜10回」のスプリントにエネルギーを100%集中させることで、試合終盤でもトップスピードのキレと判断力を維持し続けることができます。つまり、メッシの「歩行」はサボりではなく、試合を支配するための計算された戦略なのです。