球児たちが泣きながらすくい取る砂は、自然界にそのまま存在する土ではない。阪神甲子園球場のグラウンドを守り続ける「グラウンドキーパーの神様」、阪神園芸株式会社の職人たちによる門外不出の配合技術が生み出した最高傑作である。
ベースとなるのは、鹿児島県や岡山県などから厳選された黒土と、中国福建省や京都城陽産の白砂だ。この2つを独自の比率でブレンドすることで、あの独特の深い黒褐色と絶妙なクッション性が生まれる。春の選抜と夏の選手権、さらには雨の多い時期や猛暑の日々に合わせ、職人は砂と黒土の混合比率をミリ単位で微調整している。
水はけの良さと、スパイクがしっかりと噛み合う適度な粘り気。激しいスライディングでも球児の身体を傷つけない柔らかさ。阪神甲子園球場という魔物が棲む舞台は、阪神園芸の職人たちが手作業で整える砂のクオリティによって支えられているのだ。球児が持ち帰る一握りには、日本の誇るグラウンド整備技術の真髄が詰まっている。