1980年代初頭、家庭用ゲーム市場はまだ海のものとも山のものともつかぬ怪しい領域だった。そこに任天堂株式会社が送り出したのがファミリーコンピュータである。他社製品を圧倒する高性能でありながら、子どもたちの小遣いでも手に届く衝撃的な低価格設定。この戦略の陰には、製造ラインの巨額投資という社運をかけた大バクチが存在した。
さらに、ゲーム産業の構造そのものを塗り替えたのが『ゲームボーイ』や各種ハードに適用されたサードパーティ管理システムだ。質の低いソフト乱発による市場崩壊を予見した山内は、厳格なライセンス制を導入。ソフトの質をコントロールすることで、プラットフォームビジネスの強固な城壁を築き上げた。冷徹なまでのリスク管理と市場への洞察が、任天堂を世界の頂点へと押し上げた瞬間だった。