本作の誕生には、作者である工学博士・絵本作家のかこさとし氏が若き日に関わったセツルメント活動(川崎市での子ども会活動)が深く関係しています。当時、貧困や厳しい家庭環境の中で懸命に生きる子どもたちと接していたかこ氏は、社会的に不当に扱われがちな存在に強い光を当てようとしました。
一般的に黒くてゴミをあさる「嫌われ者」と見なされがちなからすをあえて主人公に据えたのは、「見た目や世間の偏見で物事を判断してはいけない」「どんな境遇であっても、知恵と工夫で人生を切り拓いていける」という強いメッセージが込められているためです。
パンが焦げてしまったり半焼きになったりした失敗作を、子どもたちが「美味しい」と喜んで食べたことから大逆転が始まる展開も、大人の固定観念にとらわれない子どもの自由な感性を信じたかこ氏ならではの哲学が反映されています。