検察側の冒頭陳述や法廷証言によって明らかになった名古屋大学殺人事件の動機は、金銭トラブルや怨恨といった一般的な犯罪動機とは完全に一線を画していました。法廷で語られたのは、「子どもの頃から人を殺してみたかった」「死んでいく過程を自分の目で観察したかった」という、純粋かつ冷徹な好奇心です。
被害者となった森外茂子さん(当時77歳)との出会いは、宗教の勧誘活動がきっかけでした。親切で面倒見の良かった森さんは、大内受刑者にとって格好のターゲットとみなされてしまいます。2014年12月7日、大内受刑者は「大学のレポートを見せたい」などと言葉巧みに森さんを名古屋市昭和区のアパート自室に誘い込みました。
室内に入った直後、背後から手斧で後頭部を複数回殴打。激しく抵抗され、森さんが命乞いをするなかでも攻撃の手を緩めることなく、最終的にはマフラーで首を絞めて窒息死させました。法廷での供述によると、息絶える瞬間まで被害者の瞳孔の動きや呼吸の停止を冷酷に見つめていたとされ、捜査員や裁判員に深いトラウマを植え付けるほどの異様な光景が記録されています。
さらに異様なのは、遺体をクローゼットに放置したまま通常の大学生活を続け、知人と食事を共にしたり講義に出席したりしていた点です。罪悪感の欠如と感情の平板化は、後述する精神医学的アプローチでも極めて特異なケースとして議論されることになります。