どこか歪んだ日常からの脱出、あるいは破滅的な愛の行方。「あたいの夏休み」というタイトルが持つ軽快な響きとは裏腹に、楽曲全体を支配しているのは強烈なヒリつきと孤独だ。当時の制作現場では、従来のシンガーソングライター像を打ち破り、より剥き出しの人間ドラマを音として表現する試みが繰り返されていたという。
主人公が叫ぶ「夏休み」とは、単なるバカンスなどではない。現実の重圧や愛憎の泥沼から一瞬だけ身を躍らせる、悲しくも力強い抵抗のポーズなのだ。言葉の節々に宿る鋭利な感覚は、聴き手自身の抑圧された感情を呼び覚まし、心の奥底にある暗がりを照らし出す。