伝統に安住することなく、大藪は常に現代の味覚を意識した新作を世に送り出している。2026年の注目は、地元石川の風土を色濃く反映させた「加賀野菜のすり流しせいろ」と「能登寒鰤の燻製鴨出汁仕立て」の限定展開だ。
春先にかけて提供されるすり流しせいろは、加賀れんこんの自然なとろみときめ細やかな舌触りを活かし、冷水で締めた十割蕎麦に絡みつくよう計算された傑作。冬の寒鰤を使った温つゆ仕立ては、伝統的な鴨出汁の技法を応用しつつ、燻香をまとわせた魚介の旨味を融合させている。
「地元の生産者が命を削って育てた食材を、蕎麦というシンプルな器でどう表現するか。それが私たちの挑戦です」と店主。素材の旬を逃さず、季節ごとに表情を変える限定メニューは、リピーターの足を止めない最大の原動力となっている。