ネット上の簡易情報や初等教育の図工のイメージから「オレンジ=赤50%+黄50%」という固定観念が広く浸透していますが、これは顔料物理学の観点からは明確な誤りです。
塗料やインクに含まれる顔料にはそれぞれ「着色力(ティンティングストレングス)」という指標が存在します。一般的な有機赤顔料(キナクリドンやアゾ系)の着色力は、黄色顔料(モノアゾやベンツイミダゾロン系)の約3倍から5倍に達します。そのため、物理的な体積比で1:1にしてしまうと、光学的力関係では赤が80%以上を占める状態と等しくなり、目指すオレンジを大幅に飛び越えて暗い朱色へと傾いてしまいます。
また、ニュアンスカラーを作る際に「黒絵の具」を投入してしまう失敗も後を絶ちません。オレンジに黒を混ぜると、黒に含まれるカーボンブラックの青み成分が反応し、一瞬で「濁ったオリーブグリーンがかった泥色」になってしまいます。深みを出したい場合は、黒ではなくバーントアンバー(焦げ茶)やローアンバーを隠し味として使用するのがプロの常識です。