彼の理論が結実した最高傑作として、まず名前が挙がるのがタイキシャトルだろう。圧倒的なスピードと雄大な馬体を誇りながら、決して気性が暴走することはなかった。国内のスプリント・マイル路線を完全制圧したのち、フランスのジャック・ル・マロワ賞へ遠征して見せた完勝劇は、日本調教馬の評価を根底から変えた。主戦を務めた岡部幸雄とのコンビネーションは、完璧なペース配分と馬のメンタルコントロールが生み出した芸術品だった。
そして中長距離の王道で絶対的な強さを見せつけたのがシンボリクリスエスだ。雄大な黒鹿毛の馬体をゆったりと構えさせ、秋の天皇賞と有馬記念をそれぞれ連覇。3歳(現表記)で臨んだグランプリの直線で見せた豪快なストライドは、まさに藤沢厩舎が追求した「無駄のないフットワーク」の極致であった。短距離からグランプリホースまで、距離や馬場を問わず名馬の資質を開花させる手腕は、世界水準の調教メソッドが日本に根付いた証左でもあった。