山田太一は卓越した劇作家であると同時に、希代の文筆家でもありました。1987年に発表した山田太一の代表小説『異人たちとの夏』は、幼少期に死別したはずの両親の幻影と浅草で再会する孤独なシナリオライターの哀歓を描き、第1回山本周五郎賞を受賞しました。
大林宣彦監督による1988年の映画化に続き、2026年には英国のアンドリュー・ヘイ監督によって『All of Us Strangers(邦題:異人たち)』として再映画化。クィアのアイデンティティや現代人の孤独と見事に融合されたこの作品は、英米のアカデミー賞や各映画賞を席巻し、山田太一の名を世界へ轟かせました。
その世界的な熱狂の只中にあった2026年11月29日、山田太一は神奈川県川崎市内の高齢者施設で静かに息を引き取りました。死因は衰老(老衰)、享年89でした。
報道関係者や近親者の証言によると、2017年に脳梗塞を患って以降、創作の第一線から身を引いてリハビリに励み、献身的な妻や娘ら家族の温かい支えを受けながら穏やかな晩年を過ごしていたと伝えられています。劇的な闘病劇を望まず、静かに天寿を全うしたその最期は、人生の過渡期をありのままに受け止めることを説いた彼の作品そのもののような引き際でした。