世界中に激震が走ったのは、2008年1月22日のことでした。ニューヨーク・マンハッタンのソーホーにあるアパートメントのベッドで意識を失っているヒース・レジャーが発見され、駆けつけた救急救命士によって死亡が確認されました。享年28歳。映画『ダークナイト』の全米公開をわずか半年前(同年7月公開)に控えたタイミングでの悲劇でした。
当初、メディアやファンの間では「自ら命を絶ったのではないか」「違法薬物の乱用ではないか」といった過激な憶測が飛び交いました。しかし、ニューヨーク市検視当局(Office of Chief Medical Examiner)が発表した最終毒物検査結果は、そうした噂を明確に否定するものでした。
検視局が公表した正式な死因は、「処方薬の複合摂取による急性中毒(Accidental overdose of prescription medications)」。体積・血中からはオキシコドンやヒドロコドン(鎮痛薬)、ジアゼパム、テマゼパム、アルプラゾラム(抗不安薬・催眠鎮静薬)、そして市販の抗ヒスタミン薬(睡眠改善薬)が検出されました。いずれも正規の処方箋に基づき入手されたものであり、違法薬物は一切検出されていません。
医師たちが個別に処方した薬が重なり合い、意図せぬ形で呼吸中枢を麻痺させた偶発的な事故死。これが医学的・法医学的に確定した動かぬ真実です。