右下腹部に痛みが生じるメカニズムは、主に「消化管の閉塞・炎症」「血流障害」「臓器の捻転・破裂」「結石による尿路の閉塞」に大別されます。なかでも発症頻度が高く、初動の遅れが致命傷になりかねない代表的な疾患が急性虫垂炎(いわゆる盲腸)です。虫垂の根元に糞石(便の塊)やリンパ組織が詰まることで細菌感染が起き、急速に炎症が拡大します。
しかし、右下腹部の痛み=虫垂炎と短絡的に決めつけるのは危険です。近年、食生活の欧米化や高齢化に伴い、大腸の壁が外側に袋状に飛び出す「大腸憩室」に炎症が起きる大腸憩室炎の罹患者が増加傾向にあります。特に日本人を含む東洋人は右側大腸(盲腸・上行結腸)に憩室ができやすい特徴があり、虫垂炎と極めて酷似した激しい右下腹部痛を引き起こします。
さらに、突然背中から腰、右下腹部にかけて脂汗が出るほどの激痛が走る場合は尿路結石(右側)が強く疑われます。腎臓で作られた結石が細い尿管に落ちて詰まる際、尿管が激しく痙攣して激痛を放散させます。このように、同じ「右下の痛み」であっても、原因臓器と病態生理はまったく異なるのです。