一方で、トッププロが集う国際大会であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)や、野球の裾野を支える学童・少年野球では、極めて厳格な点差コールド規定が機能しています。これらは一見対極のカテゴリーに見えますが、根底にある理念は「選手の身体保護」という共通の目的で貫かれています。
WBCでは、各国の実力格差を考慮し、大会の予選および1次ラウンド(プール戦)に限り以下のルールが適用されます。
- 5回終了時に15点差以上がついた場合
- 7回終了時に10点差以上がついた場合
WBCはメジャーリーガーや各国トップリーグのスター選手が国の威信をかけて激突する大会です。しかし、各球団が巨額の年俸を支払っている至宝の投手たちに対し、大差のついた敗戦処理で無駄なイニングを投げさせ、肩や肘を痛めさせるわけにはいきません。また、初出場国と強豪国の間にはスコアが20点近く離れるミスマッチが生じることもあり、敗戦国への敬意と選手の怪我防止を両立させる合理的なブレーキとして機能しています。なお、勝敗の重みが跳ね上がる準々決勝(決勝トーナメント)以降は点差コールドが撤廃され、9回まで戦います。
少年野球(学童軟式野球)におけるコールド規定は、さらに厳格です。全日本軟式野球連盟の公式ガイドラインや各地域大会では、「3回10点差」「4回7点差」といった点差規定に加え、多くの大会で「試合開始から70分または80分が経過した時点で新しいイニングに入らない」という時間制限コールドが標準化されています。
成長期にある小学生が10点以上のビハインドを背負いながらマウンドでストライクが入らず、炎天下で投球過多に陥る事態は、重大なスポーツ障害に直結します。現場で指導に当たるコーチ陣や保護者の間でも、「過酷なワンサイドゲームを迅速に終わらせることは、子供たちの心身を守るための絶対的なセーフガードである」という認識が完全に定着しています。