「キメラ=アント編」の終幕は、バトル漫画の歴史に深く刻まれる圧巻の詩情に満ちている。ネテロ会長との死闘で国家伝来の兵器「貧者のバラ」の毒に侵されたメルエム。自らの死期を悟った王が最後に求めたのは、征服した王国の御座でも、配下たちの忠誠でもなく、コムギとの対局だった。
毒は伝染する。近くにいればコムギの命も潰える。それを知りながらも、少女は「私はこの日のために生まれてきた」と微笑み、王のそばを離れなかった。暗闇へと消えていく王の視界。静寂が包む部屋で、メルエムは何度も確かめるように問いかける。「コムギ、居るか?」「はいはい、居ますよ」。
闇の中で手を重ね合い、最期の瞬間まで軍儀を指し続けた二人。王はコムギの膝の上で安らかに眠りについた。圧倒的な破壊力を誇った悪の象徴が、一人の少女の愛と温もりに包まれて最期を迎える。このコントラストと細部に散りばめられた演出の冴えは、連載当時に読者へ強烈な衝撃を与え、2026年になってもなお色褪せない感動の真相として語り継がれている。