根絶宣言後、ウイルスの公式な保有は世界でわずか2か所の高次バイオセーフティ施設に限定された。ジョージア州アトランタのアメリカ疾病予防管理センター(CDC)と、ロシアの国立ウイルス学・バイオテクノロジー研究センター「ベクター」である。しかし、ウイルスの完全廃棄をめぐる議論は米露の利害対立や研究上の必要性を理由に何度も先送りされてきた。
現在、国際社会が注視しているのは物理的なサンプル保管の問題だけではない。公開されているゲノム情報をもとに、遺伝子合成によってウイルスを人工的に再構築できるリスクが現実味を帯びている。日本の国立感染症研究所をはじめとする各国の研究機関は、極めて厳格なバイオセキュリティ基準を策定し、不正アクセスや病原体の悪用を防ぐための国際的な監視体制を強化し続けている。