精子は非常に小さな細胞ですが、その内部は驚くほど合理的かつ精密に設計されています。精子の構造は大きく分けて「頭部」「中節部(首・胴体)」「尾部(しっぽ)」の3つのパーツで構成されています。
まず、全体の約10分の1を占める頭部(長さ約4〜5μm、幅約2.5〜3.5μm)は、滑らかな楕円形をしており、父親由来のDNA(遺伝情報)が凝縮されています。頭部の先端には「先体(アクロソーム)」と呼ばれる特殊な小胞があり、卵子に出会った際にその外殻(透明帯)を溶かすための酵素を蓄えています。
頭部に続く中節部(長さ約7〜8μm)には、無数のミトコンドリアが螺旋状に密集しています。ここは精子の「エンジンルーム」であり、糖を取り込んで尾部を動かすためのエネルギー(ATP)を爆発的に生み出す拠点です。
そして推進力を生み出すのが尾部(長さ約40〜45μm)です。鞭のような細長い形状で、中節部で作られたエネルギーを使って左右にしなやかに波打ちます。この尾部の力強い動きによって、精子は1分間に約1〜3ミリメートルのスピードで前進します。精子の全長から見れば、1秒間に自身の体長の何倍もの距離を泳ぎ進む驚異的な運動能力を備えています。