なぜこれほどまでに火勢が激化し、沈静化しないのか。その背景には、地球規模の環境変化が絡み合う複雑なメカニズムが存在する。気候学者たちが特に警鐘を鳴らすのが、カナダ北部に広がる永久凍土の急速な融解と、それに伴う湿地帯の乾燥だ。
地下深くで何千年も燃えずに保たれてきた泥炭層が乾ききり、ひとたび火が移ると、地中でくすぶり続ける「ゾンビ・ファイア(潜伏火災)」となる。冬の間も雪の下でひっそりと生き残り、春の訪れとともに再び地上へ吹き出すのだ。さらに、北極圏の温暖化に伴って蛇行が激しくなったジェット気流が、高気圧を同じ場所にとどまらせる「ヒートドーム」現象を頻発させている。雨の降らない異常乾燥が数か月単位で続く土地に、火の手が逃げ場なく襲いかかっている。