歴史のページをめくると、この迷信が広まった背景には江戸時代の社会的価値観と庶民の経済事情が見えてくる。
最も有力な説は、うなぎの強い脂っこさと梅干しのさわやかな酸味が合わさることで、食欲が刺激されすぎて過食に陥るのを防ぐための「戒め」だったというものだ。当時のうなぎは庶民にとって大変なごちそうであり、贅沢に食べ過ぎて腹を壊したり破産したりしないよう、先人が生活の知恵として言い含めたのが始まりとされる。
もう一つの切実な理由は、食中毒予防だ。梅干しの強力な酸味がうなぎの傷みや脂の酸化による異臭をごまかしてしまうため、腐敗に気づかずに食べて腹痛を起こすリスクがあった。冷蔵技術が存在しなかった時代ならではのリスク管理が、いつしか「毒になる食べ合わせ」へと姿を変えたわけだ。