骨を粉々に砕くことなく、頭蓋骨から足先まで生前の面影を残したまま焼き上げる技術は、世界的に見ても日本特有の高度な文化だ。それを支えているのが火葬技師と呼ばれる専門職の存在である。
現代の炉は最新のコンピューターによって風量や炉内圧力が自動制御されているが、それだけで完璧な収骨状態を作ることはできない。ご遺体の体格、脂肪の量、年齢、さらには生前の投薬歴や棺内の乾燥度合いによって、燃焼パターンは一輪ごとに全く異なるからだ。
火葬技師は、炉の背面にある小さな覗き窓(覗き孔)から炎の色や揺らぎ、煙の立ち上り方を注視し、手動で空気比率やバーナーの出力をミリ単位で微調整する。風圧が強すぎれば細かな指の骨や喉仏が吹き飛んでしまい、温度が低すぎれば骨に黒い炭化物が残ってしまう。炉内の気流を巧みに操り、骨を動かさず、純白に近い状態で焼き上げる作業は、まさに熱力学と長年の直感が交差する職人技といえる。