一般的な七福神巡りはその名の通り7つの社寺を巡りますが、浅草名所七福神(あさくさなどころしちふくじん)は浅草寺・浅草神社・待乳山聖天・今戸神社・橋場不動尊・石浜神社・吉原神社・鷲神社・矢先稲荷神社の計9社寺で構成されています。福禄寿と寿老人がそれぞれ2社寺ずつ祀られており、「なぜ7柱なのに9箇所なのか?」と疑問に思う参拝者は後を絶ちません。
この最大の理由は、古代中国の数理思想である「易経」や陽数(奇数)の概念に由来します。東洋の伝統において奇数は縁起の良い「陽の数」とされ、その中でも1桁の奇数で最大となる「九」は至高の極数・最強の吉数として重用されてきました。
さらに「九」は「鳩(あつまる)」や「窮すれば通ず」に通じ、「福が多く集まり、福寿が永く続く(福寿長久)」という願いが込められています。江戸時代、七福神信仰が庶民に定着するなかで、浅草の商人や町人たちが「縁起の良い九の数で揃えよう」と知恵を絞り、福禄寿と寿老人を2社寺ずつ配して9社寺の巡礼コースを完成させました。単なる数合わせではなく、下町特有の洒落と深い信仰心が融合した粋な歴史が隠されています。