ピンクの可憐なウサギがなぜ、冷徹な人格障害を指す「サイコパス」などと呼ばれる事態に陥ったのか。その謎を解く鍵は、2005年4月に放送を開始したテレビアニメ『おねがいマイメロディ』(テレビ大阪・読売広告社・スタジオコメット制作)の革新的な演出方針に隠されています。
本作のメガホンをとった森脇真琴監督といえば、『ミルキィホームズ』や『プリパラ』などでも知られるギャグアニメ界の鬼才です。サンリオ側からの「従来のイメージに囚われず、とにかく面白い作品にしてほしい」というオーダーを受け、スタッフ陣が構築したのは、従来のサンリオアニメの枠組みを根底から覆す不条理かつカオスなコメディ空間でした。
そこで生まれたのが、「100%純粋な善意で行動しているにもかかわらず、結果として周囲を徹底的に破滅へ追い込む」というマイメロディのキャラクター造形です。現実社会におけるサイコパスは「他者への共感性の欠如」や「自己の利益のための冷酷な計算」を特徴としますが、アニメ版のマイメロディは計算どころか悪意が1ミリも存在しません。相手が泣き叫ぼうが激怒しようが、ニコニコとした笑顔で「どうしたの?」「お願い♪」と返すその姿が、視聴者の目には「常人の痛覚や感情の起伏が一切通じない、最も恐ろしいタイプのサイコパス」として映ったのです。