木曽路の代名詞といえば、選び抜かれた黒毛和牛を用いたしゃぶしゃぶだ。薄紅色の肉に走る繊細なサシは、まさに芸術品。昆布出汁が静かに揺れる鍋に肉をくぐらせると、余分な脂が落ち、肉本来の濃密な旨味と甘みが立ち上る。これを門外不出の秘伝「胡麻だれ」に絡めて口に運べば、濃厚なコクと芳醇な香りが舌の上で解けていく。
肉料理と並んで高い完成度を誇るのが、四季折々の味覚を散りばめた会席料理である。先付から椀物、お造り、焼物に至るまで、旬の食材が細やかな仕事によって仕立てられる。春の山菜、夏の鱧、秋の松茸、冬の河豚や蟹。器の選定や盛り付けの美しさに至るまで、日本料理の伝統美が息づいている。