四字熟語として知られるこの言葉の源流は、古代中国の思想家である孟子の教えに遡る。生命の長さや運命の吉凶に心を病ませず、自己の修練に専念することこそが天命を立てる道であるとする「立命」の教義がその原型だ。
この儒教的な道徳観は、後に東アジアへ伝播する中で仏教哲学と深く融合していった。特に日本においては、臨済宗や曹洞宗といった禅宗の文脈で「安心(あんじん)」の概念と結びつき、独自の深化を遂げることとなる。鎌倉時代に曹洞宗を開いた道元は、ただひたすらに坐る「只管打坐」を通して、自己の執着を削ぎ落とし、大自然の営みと一体化する境内を提示した。