映画『ズートピア』に登場するあの可愛らしいアイスキャンディーの正式名称は、英語で「パウシクル(Pawpsicle)」と呼ばれます。動物の足先や肉球を意味する「Paw(パウ)」と、棒付きアイスを指す「Popsicle(ポップシクル)」を掛け合わせた造語で、日本語吹き替え版や字幕でもファンの間でこの愛称が定着しています。
作中でニックが展開したビジネスは、単なる路上販売にとどまらない極めて緻密な「多段転売スキーム」でした。その全工程を分解すると、驚くべき効率性と狡猾さが浮き彫りになります。
まず、ニックは相棒のフィニックを幼いゾウのコスプレ(ゾウの着ぐるみ)をさせた我が子に仕立て上げ、ゾウ専用のカフェ「ジャンボ・カフェ」へ乗り込みます。偏見による入店拒否を訴え、良心的な新米警官ジュディ・ホップスに同情させて代金を肩代わりさせ、定価15ドル(約2,250円相当)の巨大アイス「ジャンボポップ」を1本タダ同然で手に入れます。
その後、ニックたちは以下のステップで商品を加工・再販売します。
- 溶解と滅菌加工:ビルの屋上に持ち込み、太陽熱とスチームパイプの蒸気を使ってジャンボポップを液体状に溶かす。
- 成型と急速冷凍:溶かした液体を肉球型のトレイに流し込み、極寒地帯「ツンドラ・タウン」の天然の雪原に差し込んで急速冷却・成型する。
- ターゲット販売:ダウンタウンの金融街へ移動し、銀行から整列して退勤してくるビジネスマンのレミングたちへ1本2ドルで売りさばく(瞬く間に完売)。
- 廃材の二次転売:レミングたちが舐め終わって捨てた大量のアイスの棒(スティック)をゴミ箱から回収。洗浄して「赤杉の木材」と偽り、ネズミたちが暮らす小人都市「リトル・ローディンシア」の建設現場に売却する。
わずか1本のジャンボポップから数十本のパウシクルを量産して200ドル以上の売上を叩き出し、さらに廃材スティックを木材として売ることで資材回収費まで計上するこのスキームは、原価回収率にして1300%を超える驚異的な利回りです。しかし、食品衛生法違反や無許可営業、さらには劇中でジュディが指摘した「20年間に及ぶ未申告・脱税」という重大な法的欠陥を抱えたブラックビジネスでもありました。