この現象は日本国内にとどまらない。東京・原宿の発信地から溢れ出た「ゆるカワ」の美学は、パリ、ニューヨーク、ソウルの街頭広告や高級ブランドのキャンペーンにまで侵食している。これまで厳格なブランドガイドラインを守り続けてきた老舗メゾンすら、手描きのゆるいマスコットキャラクターをアイコンとして前面に押し出し始めた。
若い世代にとって、完璧にレタッチされたモデルやCG広告は「演出された虚構」として捉えられがちだ。対して、計算されていないかのような素朴なイラストには、飾り気のない本物感(オーセンティシティ)が宿る。シニア層にとっても、どこか懐かしく温かみを感じさせる絵柄は親しみやすい。不完全さこそが、多様な価値観が交錯する現代において最も普遍的な共感言語となっているのだ。