キスショットの過去は、決して華々しい覇道ではなく、底知れぬ孤独と悲劇の連続でした。原作『業物語』収録の「あせろらボナペティ」では、彼女がまだ人間であった頃の出自が克明に描かれています。
ある国のお姫様として生まれた彼女は、誰もが見惚れる美貌を持っていたことから「うつくし姫」と呼ばれていました。しかしその美しさは常軌を逸しており、彼女を見た者は自らの内面の醜さに耐えきれず、財産や命を投げ打って自死を選ぶという呪縛と化してしまいます。国は滅び、望まぬ死の山を築き続けた彼女の前に現れたのが、本物の吸血鬼スーサイドマスターでした。彼女は周囲の人間を死なせないため、人間であることを捨てて吸血鬼となる道を選びました。
その後、約400年前に日本へと漂着したキスショットは、そこで最初の眷属となる武士・死屍累生死郎(ししるいせいしろう)を生み出します。これが「初代怪異殺し」です。しかし、日光を浴びて灰燼に帰した生死郎の悲痛な最期を目の当たりにしたキスショットは深い絶望を抱き、二度と眷属を作らないと心に誓うことになりました。この過去のトラウマが、後の『傷物語』における阿良々木暦との宿命的な出逢いへと繋がっていきます。