俳優として確固たる地位を築いた奥田瑛二は、やがて自らの表現を追求するために映画監督への道を切り拓く。その挑戦を誰よりも間近で支えたのが安藤和津だった。ふたりは個人事務所兼制作会社「ゼロ・ピクチュアズ」を設立。映画製作には巨額の資金と大きなリスクがともなうが、妻はプロデューサーや資金繰り、現場のバックアップまで買って出た。
その結実とも言えるのが、モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞した映画『長い散歩』などの名作群だ。人間の孤独や家族の再生を静謐な映像美で描いた作品群は、映画業界の内外から高い評価を獲得。単なる夫婦という枠を超え、映画制作の同志として深い絆を結んでいったふたりの姿は、まさに人生そのものが上質なヒューマンドラマだ。