この宿を語る上で欠かせないのが、寛永7年(1630年)創業の歴史を誇る老舗、株式会社一の湯の経営哲学だ。同社を率いる代表取締役の小川晴也氏は、日本の温泉旅館が長年抱えてきた旧態依然とした商習慣を次々と見直してきた。
「宿泊客が本当に求めている価値は何か」という問いに対する同社の答えは明快だ。仲居による過剰な部屋食サービスや過度なおもてなしを削ぎ落とし、その分を良質な温泉設備、清潔な空間、そして納得感のある適正価格へと還元する。高級旅館が1泊数万円から十数万円へと高騰するなか、手の届くラグジュアリーを体現したビジネスモデルは、業界関係者からも熱い注目を浴びている。