この奇跡的なコレクションを築き上げたのが、明治時代の起業家であり藤田財閥の創始者である藤田傳三郎だ。明治維新の混乱期、廃仏毀釈や社会の激変によって、貴重な寺社の宝物や文化財が海外へと二束三文で流出していた。その現状に強い危機感を抱いた彼は、「日本の宝を海外に渡してはならない」という並々ならぬ執念で私財を投げ打ち、散逸の危機にあったアートを買い戻し続けた。
彼が収集したコレクションの幅は実に広い。仏像、絵画、漆工、陶磁器、そして茶の湯の道具に至るまで、東洋美術の精華が集められた。単なる富の象徴としてのコレクションではなく、日本の文化的アイデンティティを守り抜くという崇高な使命感が、この美術館の礎となっているのだ。