実際の取引現場ではどのような変化が起きているのか。国内貴金属の指標となる田中貴金属工業の直営店や大手買取カウンターを取材すると、ネット上の楽観論とは異なる生々しい投資家心理が浮かび上がってきます。
店頭では、過去最高値水準の更新報道を機に、数十年前に購入したインゴットや金貨、ジュエリーを持ち込むシニア層の売却手続きが日常化しています。来店した都内在住の60代男性は次のように語りました。
「バブル期や2000年代初頭の1gあたり1,000円〜2,000円台だった頃に買った金バーを売却しました。まだ上がるかもしれないという欲はありますが、急激な円高に振れたら一気に目減りしてしまう。利益が出ているうちに現金化して、子どもへの生前贈与や老後資金に充てるのが最も堅実だと判断しました」
一方で、SNSや投資コミュニティ(5ちゃんねる、知恵袋等)を観察すると、「今から純金積立を始めても間に合うか」「高値掴みで損をしたくない」といった切実な相談が急増しています。すでに先行して巨額の利益を得たベテラン投資家が売却の出口戦略を講じている裏で、初心者が焦燥感から参入を試みる構図は、典型的な相場過熱の末期症状とも合致します。