私たちは幼い頃から「目標を持ち、それを追い求めよ」と教育されてきた。求めることが善であり、求めないことは停滞や敗北であるかのように教え込まれてきたのだ。しかし、加島祥造が提示したのは、求めても求めても満たされない「無限地獄」からの脱出路であった。
「求めない――すると、いまあるものが豊かに見えてくる」。この逆転の発想こそが、現代人のコンプレックスや承認欲求を一瞬で無力化する。所有することへの執着を一つ手放すごとに、心には確かなスペースが生まれる。そのスペースにこそ、本当の安らぎや他者への慈しみが流れ込むのだ。