人工知能が数億手先まで計算する現代将棋において、人間の思考がAIの弾き出した数値を凌駕する瞬間が存在する。竜王戦や名人戦をはじめとする最高峰の舞台で藤井聡太が見せた「AI超えの一手」は、まさにその証左と言えるだろう。スーパーコンピュータを用いても発見に数十分を要するような絶妙手が、彼の直感と圧倒的な盤上没入によって指し示される時、画面上の評価値メーターは激しく揺れ動く。
ハイライト動画で繰り返し再生されるのは、終盤の窮地に追い込まれた局面からの驚くべき手筋だ。一見すると自玉を危険に晒すような一手や、駒損を恐れない大胆な捨て駒。しかし、その数十手先には完璧な詰みが用意されている。解説を務めるトップ棋士たちすら言葉を失うその思考プロセスは、AI将棋解析のデータと比較することでより鮮明に浮かび上がる。動画のコマ送り機能を使ってプロ棋士の表情の変化と盤面の遷移を同期させて観察するスタイルは、現代の将棋観戦における醍醐味となっている。