新大久保で看板を掲げる店舗を訪れる前に押さえておきたいのが、韓国式ジャージャー麺の違いと特徴です。日本の大衆中華で親しまれている「炸醤麺(ジャージャーメン)」は、甜麺醤や豆板醤をベースに挽肉とタケノコなどを炒め、ピリ辛で塩気の効いた肉味噌をキュウリとともに中華麺に乗せる四川・北京由来の料理です。
対して韓国の国民食である「チャジャン麺(チャジャンミョン)」は、19世紀末に仁川の中華街へ渡った華僑が持ち込んだ料理がルーツとされています。最大の特徴は、大豆と小麦粉を発酵させてカラメルを加えた「チュンジャン(春醤)」と呼ばれる黒い味噌を、多量の食用油でじっくりと炒め上げることです。サイコロ状に切った豚肉や玉ねぎ、キャベツとともに強火で炒め、デンプンでとろみをつけた餡は、辛みが一切なく、玉ねぎの芳醇な甘みと香ばしいコクが際立ちます。
韓国社会においてこの麺料理は、単なる外食にとどまらず、引越しの日や卒業式の日に家族で囲む思い出の味、さらには4月14日の「ブラックデー」に恋人のいない若者が集まって食べる連帯の象徴としての文化的文脈を持っています。真っ黒な見た目に反して角のないまろやかな口当たりは、一度舌になじむと定期的に欲してしまう中毒性を秘めています。