高齢の家族が透析を勧められた際、最も直面したくない、しかし直視しなければならないのが「予後(余命)」の数値です。日本透析医学会統計調査の最新データによると、透析導入患者の平均年齢は70歳を優に超え、新規導入患者のうち80歳以上の後期高齢者が占める割合は全体の3割近くまで跳ね上がっています。
透析医学会の追跡データが示す冷徹な数字として、80歳〜84歳で血液透析を開始した場合の平均余命はおよそ3.5年〜4年、85歳以上の超高齢期での導入になると約2年〜2.5年にまで縮小します。さらに、80代人工透析の平均余命と5年生存率に目を向けると、導入後5年間生存できる割合は80代前半で約35%前後、85歳以上では25%前後まで急落します。これは、透析を行えば若い世代と同じように元気に生き長らえられるわけではないというシビアな現実を物語っています。
さらに注視すべきは、80代透析患者の主な死因と心不全リスクです。透析患者の死因第1位は一貫して「心血管病変(心不全)」であり、全死因の約27〜30%を占めます。透析によって余分な水分や毒素を排出する処理自体が、すでに動脈硬化が進んだ高齢者の心臓や血管に莫大なポンプ負荷をかけます。急激な除水による血圧低下や心筋虚血、血管の石灰化が連鎖し、結果的に心不全死を誘発するケースが後を絶ちません。次いで多いのが肺炎や敗血症などの「感染症」(約22%)であり、免疫機能が著しく落ちた80代の身体にとって、シャント穿刺部からの感染や誤嚥性肺炎が命取りになります。