なぜハルカはキモリに対してそこまでの拒否感を示したのか、その理由はキモリのモチーフと当時の若者文化という2つの側面から紐解くことができます。
造形面において、キモリはヤモリ(樹上棲のトカゲ)をモチーフにして設計されています。前作『金・銀』のくさタイプ御三家であるチコリータが極めて愛くるしいマスコット調のデザインだったのに対し、キモリは爬虫類特有の平たい頭部、鋭角的な目つき、冷徹さを感じさせるスリムな体躯を特徴としていました。ポケモンに「可愛らしさ」を期待していた初心者の少女目線からは、少々不気味で近寄りがたく映ったのは無理もありません。
さらに言語的な背景として、2000年代初頭の日本社会では「キモい(気持ち悪い)」という若者言葉が日常語として爆発的に定着していました。名前の頭文字である「キモ」とスラングの「キモッ」が偶然にも一致した言葉遊びの要素が加わったことで、脚本上の何気ないワンフレーズが視聴者の記憶に深く刻み込まれる結果となったのです。