東京博善が現在の資本構成に至るまでには、日本の金融市場を揺るがした激しい企業買収合戦が存在しました。なぜ、地方自治体が担うべき火葬インフラが、このようなマネーゲームの標的となってしまったのでしょうか。その買収の経緯は2019年にまで遡ります。
当初、広済堂の経営陣と創業家は、米投資ファンドのベインキャピタルと組んでマネジメント・バイアウト(MBO)による非公開化を目指しました。しかし、東京博善の持つ莫大な資産価値に比べて買付価格が低すぎるとして、旧村上ファンド系の投資会社「レノ」が突如介入し、株式を大量取得して対抗TOBを仕掛けます。これによりMBOは不成立に終わりました。
さらにそこへ、麻生太郎元首相の親族企業として知られる麻生グループ(株式会社麻生)が参戦します。麻生グループは「日本の伝統と社会インフラを守る」という大義名分を掲げて広済堂株を買い増し、筆頭株主に躍り出ました。一時は麻生グループ主導による再建が進むかに見えましたが、株式市場での攻防はさらに混迷を極めます。
この混戦の隙を突く形で、着々と株式を買い集めたのが羅怡文氏率いる陣営でした。羅氏側は旧村上ファンド系から株式を買い取り、さらに香港や海外の機関投資家と連携して議決権を拡大。2026年の株主総会において、麻生グループが推す経営陣との委任状争奪戦(プロキシーファイト)に勝利し、取締役会の過半数を制圧しました。その後、麻生グループは保有株を段階的に売却・縮小し、羅氏側による完全な主導権掌握が確定したのです。