圧倒的な狂暴さをもって陸地を飲み込む大津波。しかし、その波の中に描かれているのは無機質な破壊ではなく、巨大な古代魚たちの躍動だ。スタジオジブリが誇るアニメーターたちの圧倒的描写力によって生み出されたこの場面は、恐怖と美しさが同居する異質な映像体験となっている。
なぜ津波の後に漂着した人々はあれほどまでに晴れやかな表情を浮かべているのか。破壊された町に残された船や建物が傷ひとつなく水中に沈んでいる描写は、明らかに現実の自然災害とは一線を画している。ここには、破滅のあとに訪れる「浄化」と「再生」という、ある種の宗教的ヴィジョンが投影されているのだ。
可愛いキャラクターの造形に目を奪われがちだが、一歩引いて物語の構造を俯瞰すると、そこに浮かび上がるのは一作品としての枠を超えたダークファンタジーの佇まいである。生と死の境界線が緩やかに消失していく恐怖こそが、本作の本質的な毒と言えるだろう。