テレビやネット配信で目にする官房長官の記者会見はわずか10分から20分程度ですが、その裏側では官邸スタッフと各省庁による壮絶な情報戦が繰り広げられています。
会見前には、内閣広報官や秘書官、関係省庁の局長クラスが作成した膨大な「想定問答集」が官房長官のもとに集約されます。しかし、優れた官房長官ほど原稿棒読みを避け、わずかな言葉のニュアンスで政府の方向性を示唆し、時には敢えて踏み込まずに事態を見極める高度な情報コントロールを行います。歴代内閣総理大臣が最も信頼を置く腹心をこのポストに据えるのは、官房長官の不用意な一言が政権を即座に崩壊させかねないリスクを孕んでいるためです。
首相が国家の理念や大きなビジョンを語る存在であるならば、官房長官はそれを泥臭く実現するための根回しを行い、政権内に生じる軋轢を水面下で処理する実務責任者です。歴代政権の命運を分けたのは、常にこの「総理と官房長官の信頼関係と力関係のバランス」であったと言えます。