アスリートのキャリアに波はつきものだ。桐生もまた、右足の故障や休養期間、さらには若い世代の台頭による世代交代の波にさらされる局面を何度も経験してきた。そうしたスランプの最中、彼を突き動かしたのも家族の存在だった。
従来の「ピッチで押す走法」から、加齢や肉体の変化に合わせた「ストライドを活かした省エネ型の高効率走法」への転換。このフォーム改革は、これまでの成功体験を捨てるに等しい苦痛を伴う挑戦だった。試行錯誤を繰り返す日々の中で、愚痴を吐くことなく愚直に練習へと向かえたのは、足元を支える家庭の存在があったからこそだ。ドン底の時期を共に乗り越えた体験が、現在の桐生の走りに深い味わいと深みを与えている。