なぜ塩水濃度は3%でなければならないのか。それは日本の沿岸における平均的な海水濃度の再現に他ならない。薄すぎる塩水や真水では貝がストレスを感じて固く口を閉ざし、逆に濃すぎても細胞が脱水症状を起こしてしまう。海水に近い3%の環境に置かれた二枚貝は、リラックスして活発に水管を伸ばし、体内の砂を勢いよく外部へ排出する。
さらに興味深いのは、貝の旨味成分であるコハク酸の挙動だ。適切な塩分濃度で適度にリラックスさせながら呼吸を促すと、貝内部の代謝が活発化し、コハク酸をはじめとするアミノ酸系の旨味成分が著しく増加することが研究で分かっている。単に砂を抜く作業ではなく、旨味を極限まで引き出すための科学的な熟成プロセスと言える。