日本国内のファンが最も気にかけるのが、「現地の一般市民は野球を知っているのか?」という点でしょう。結論から述べると、イタリア野球の人気と知名度は、国技であるサッカー(セリエA)やモータースポーツ、バスケットボール、バレーボールと比較すると、極めて限定的と言わざるを得ません。
現地メディアの報道量やテレビ中継の枠を見ても、日常的にプロ野球が大きく取り上げられる機会は稀です。イタリアにおける野球の歴史は、第二次世界大戦末期に連合国軍として上陸した米軍兵士たちが、トスカーナやラツィオの駐屯地でボールを投げ合ったことから本格化しました。その後、1948年に国内リーグが創設され、イタリア野球の歴史と現在に至る70余年の歩みが刻まれています。
特にエミリア=ロマーニャ州(ボローニャ、パルマ、リミニ)やラツィオ州(ネットゥーノ)といった特定の地域には、熱狂的な「ベースボールタウン」が存在します。週末のスタジアムには数百人から多い時で2,000人規模の地元ファンが集まり、ワインやパニーニを片手に審判の判定に熱烈な野次を飛ばす、独特のコミュニティ文化が根付いています。
ただし、国内リーグであるイタリア・セリエA野球の選手たちの多くは、完全なプロフェッショナルではありません。外国人助っ人やごく一部の看板選手を除き、昼間は理学療法士、会社員、エンジニアとして働き、夜間や週末にグラウンドへ集うセミプロフェッショナル構造が一般的です。資金難によるクラブの統廃合といったシビアな現実に直面しながらも、彼らは純粋な野球への情熱(パッシオーネ)によってボールを追い続けています。