1989年11月6日、ハリウッド大作『ブラック・レイン』で世界的な評価を獲得し、名実ともに国際派スターへと飛翔しようとしていた矢先、松田優作は膀胱がんのため享年40歳でこの世を去りました。
この時、妻の美由紀は弱冠28歳。手元に残されたのは、6歳の龍平、4歳の翔太、そしてまだ生後1歳に満たなかった長女・ゆう姫の3人の幼子でした。最愛の夫を失った悲痛な絶望の中、美由紀が下した決断は「優作の残した魂と子どもたちを守り抜くこと」でした。
美由紀は自ら個人事務所「オフィス作」を立ち上げ、優作の著作権や肖像権を厳格に管理しながら、一家の大黒柱として奔走します。女優としてドラマや舞台に復帰する傍ら、独学で学んだ写真家としても頭角を現し、数多くの著名人のポートレートや広告写真を手掛けました。
世間からは「奔放な若妻」と見られることもあった美由紀ですが、その実態は並外れたバイタリティと審美眼を持ったプロデューサーであり、子どもたちに対して決して優作の影を押し付けず、個々の表現欲求を徹底して伸ばす教育を貫きました。