日本における最高額紙幣の顔が変更されたのは、実に1984年以来のことだ。聖徳太子から福沢諭吉へと引き継がれた伝統のバトンが、半世紀近くの時を経て渋沢栄一の手へと渡った。
紙幣のデザイン変更は、単なる偽造防止対策にとどまらない。その時代、国がどのような価値観を尊び、どのような人物像を未来の指針としたいのかというメッセージが込められている。長年親しまれた福沢諭吉の「学問のすすめ」に象徴される啓蒙の時代から、実業と社会貢献を両立させた渋沢栄一の時代へ。このシフトには、先行きが不透明な現代日本に対する強い姿勢が透けて見える。