佐々木が駆った愛機は九九式双発軽爆撃機だった。本来は精密爆撃と機動力に長けた爆撃機であり、自爆前提の兵器として設計されたものではない。しかし軍上層部は、この機体の鼻先に起爆信管を取り付け、特殊な「体当たり機」へと改造を施した。逃げ場を奪われた搭乗員たちの絶望は計り知れない。
万朶隊の隊員たちは、死を前提とした出撃命令に直面しながら、激しい葛藤を抱えていた。技術を磨いた飛行士ほど、正当な爆撃戦術で戦うことを望んだ。命を軽視する大本営の方針に対し、現場の兵士たちが感じていた違和感と無力感。九九式双発軽爆撃機の操縦桿を握りながら、佐々木は命を捨てずに成果を出す方法を冷静に模索し続けていたのである。